HOTSHOT-ALEX MOULTON

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代官山のギャラリーでアレックス・モールトンの自転車を展示していた。このイギリス紳士のデザインする自転車は造形的に面白く、まるで小さなクレーンのよ うなフレームの骨組みで、乗る人を軽快に運ぶ。小径の組立式自転車でありながら、スピード記録を打ち立てた時代もあったと本で読んだ記憶がある。実際にス ピードにチャレンジした仕様のバイクも展示してあった。イギリス人の国民性と、DNAに組み込まれたデザイン感覚を充分に感じとることが出来る。磨き上げ られ成形されたアルミニウムやステンレスのパーツは、手のひらや指先の感覚とある種の快感によって現出した工芸品だ。工芸品の集合によって完成したアレッ クス・モールトンの自転車は、美術品の価値を持っている。アレックス・モールトンに限らずハンドクラフトされたロードバイク、なかでもスピードを競い合う 自転車のテクノロジーとマテリアルの融合具合は、疑いなく現代美術的だと言える。またがって走るエロス。ペダルを回転させて推力を得る反復運動に込められ た人類の自然な欲求、自然に対する親和の感情は、古来変わらず素直な欲望として存在する。自分の力で得るスピードやディスタンス。イギリスのブラッド フォードにある古城に住み、厩を工房にして製作されるノーブルなバイクとモールトン氏は日常の美そのもの。画像は1995年型AM-GT。 ミック・イタヤ