HOTSHOT-花火

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打ち上げ花火をパラパラと降って来る玉の燃えかすや火の粉を避けながらほとんど真下から見上げている。足元にくすぶるような火薬臭いクラフト紙の厚紙が薄 く煙りを漂わせて転がっている。急に風が強くなり小雨も交じり始め風向きが変わった。雨と化合した火薬の煤は付近に駐車している車のボディに振り落ちてこ びり付き思わぬダメージを与えている。予期せぬ雨と強い風のせいで花火の時間は原始の儀式か天変地異の出来事のように感じられる。火と水と風。これに大地 の鳴動が加わるとしたら妄想が過ぎる。しかし花火の爆発音は空気を急激に膨らませ体を動かすような音圧がある。遠くビルとビルとの間に開く花火。遠雷にも 似た音を響かせて花火と言うよりはこんもりとした都会の輝く森のようにさえ見える。距離があり過ぎるためにその遠雷にも似た爆発音はこんもりと開く花火と は極力関係性のないような遠い間のある体裁になる。この世界とは関係の薄い出来事を匂わせる幻のような存在感。都市を彩る幾多の景色のなかでも特に日常性 の希薄なイルミネーション。ろうそくの灯り神輿に花火。魂を浄め慰める。あるいは魂そのものが宿るメディア。花火職人の打ち上げられた花火を見るとそれが 自分の作ったものかどうかすぐ分かるという言葉が印象に残る。花火と共に暑い夏が過ぎて行く一瞬。 ミック・イタヤ

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